医院開業の方へ
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開業すれば成功する時代は終わったここ数年、毎年、全国で約1000件の診療所が増加していると言われています。確かに私どもの会計事務所でも、昨年、30件を超える新規開業があり、今年も6月までに既に 18 件の新規開業を立ち上げています。私は1/4世紀にわたり医療機関の経営コンサルティングを行ってきた経験から、開業すれば、どんな医師でもそれなりに成功するといった時代は終焉し、後10年もすれば、歯科医院と同様、医科診療所も過当競争時代に突入し、開業しても、半分以上は、経営的に厳しい状況に追い込まれるのでではないかと危惧しています。したがって、開業を考えられている医師は、来るべき時代を見据え、それなりの気構えをもって新規開業の準備をしなければなりません。 開業の動機は、「自らが目指す診療を実現したい」、「このままでは、将来が不安」、「病院人事に対する不満」など、さまざまであります。しかし、開業医になるということは、経営者になることであり、それなりの覚悟と準備をしておかなければなりません。診療だけやっていればすんだ勤務医とは違い、労務管理、財務管理など今まで経験したことのない未知の世界とも取り組まなければなりません。 開業不安材料ベスト3開業医として独立しようと思い立って相談に来る先生方の心配事ベスト3は、次の3つです。
日経 ヘルスケアーのアンケート(417件)の「開業後に失敗したと感じた項目ベスト5」は次の通りです。
したがって、開業に踏み切るまで間に、少しでも心配事がけ少なくなるように準備をおろそかにしてはなりません。 差別化する医療コンセプトの確立開業後の最大のストレスは患者がなかなか増えず、経営が軌道に乗らないことです。 患者さんにはすでに「かかりつけ医」がいます。その患者さんを先生が開設する医療機関に来てもらうようにするには、引きつける何かがなくてはなりません。そのためには他院と差別化された医療理念や診療内容(医療コンセプト)の確立が必要になります。差別化された医療コンセプトというと、先生方は今までの大病院勤務経験から発想した開業医の医療コンセプトをイメージしてしまします。ここに、大きな危険が潜んでいます。 はやっている診療所でイメージをつかむ開業医に訪れる患者の本当のニースを知る最良の方法は、既に開業している先輩(できるだけ診療科目が同じ)の診療所をいろいろ見学し、現場の生の声を聞くことです。そうすると、はやっている診療所の医療コンセプトがみえてきます。そうすると何を自院として特徴を出すべきかがわかってきます。同時に、開業前の思惑と開業後の実際との違い、患者サービスの在り方、設備や内装における失敗談、スタッフ教育の方法や苦労話なども聞き出すようにしてください。 失敗事例も貴重な情報としてもちろん、成功している診療所だけでなく、あまりはやっていない診療所からの情報入手も大切です。成功している診療所は例えば10個の要件を満たしているから成功しているとすると、5〜6の成功要因がわかってもとしても、本当に成功する方法を理解したとはいえません。しかし、失敗した要因が1つでもわかれば、同じ失敗は繰り返さなくてもすみます。 こうした現場の声を聞きながら先生にあった医療理念や診療内容を具体的に固めていき、ある程度固まった時点で、開業の目的、経営目的、医療コンセプトを書面にしっかりしたためるようにします。そうすると、おおよその設備投資額の大きさもわかり、開業時点で作成するHPのコンテンツも自信をもって作成できるようになります。 絶対必要な家族の協力開業医にとって、家族、特に奥様の支援は絶対不可欠であります。開業を思い立っても、勤務医として時間を拘束されているので、なかなか思うように開業準備が進みません。開業資金にしても奥様の協力が無くては、目標の金額を貯めることもできません。また、融資を受けるには担保物件の提供や保証人も必要になるため、奥様の実家の協力も必要になることもあります。さらに、開業後も、先生は診療に専念するため、内部管理は奥様の支援が必要とされるケースがよくあります。ご夫婦がよく話し合い、合意の上で、開業に踏み切ることが成功への必要条件といえます。内助の功というか、開業すれば経理やレセプトの知識も必要になるということで、密かに専門学校に通っていた奥様もいます。 開業コンサルタントを上手に使う新規開業した開業医のうち約7割が、何らかのコンサルタントを利用したというデータあります。開業に詳しい、実績が豊富で、信頼できるコンサルタントなら、先生一人で準備するより効率よく、的確に必要な開業業務をスケジュール通り進めてくれます。 途中で先生が判断や意思決定に迷ったときも、適切なアドバイスが受けられるので大きな支えにもなります。しかし、実績が豊富で、信頼できるコンサルタントであっても、開業地の選定は、必ず先生が自ら見に行き、先生自ら周辺の住民から聞き込みを行い、またライバルになると思われる医療機関の実態をつぶさに観察しなければなりません。そのうえで、先生が実施しようとしている医療コンセプトで、自信と確信を持って開業できるか判断する必要があります。医療器械の選定、内装設備の要望などは、先生がイニシャティブを持ち、コンサル料については、最初にしっかり決めておき、曖昧にしてスタートしないことが上手にコンサルタントを使うポイントです。 成功している開業医の特徴
患者・スタッフの評価が成功へのポイント経営がうまくいくか、いかないかは、患者さんやスタッフから先生がどのように評価されているかにかかっています。評価は1日でできるものではなく、毎日の積み上げから生まれてくるものです。したがって、何よりも人間的な魅力の向上に努力していくことが大切です。患者さんや職員から惚れられるような人間になれれば成功は間違いありません。 |