医院開業の方へ
 

上手な資金調達の方法とその活用方法

設備投資は NEED を確信して決める

成功が確信できるイメージの診療体制を確立するには、どのくらいの設備投資が必要になるかをシミュレートします。設備投資の大きさは、資金繰り計画、診療科目、開業物件の諸要件、担保に提供できる不動産等の金額、資金調達先の金融機関の姿勢、自己資金の額などによって大きく変わります。諸要件を多角的に検討して実現可能な概算投資額を決定します。このプロセスにおいて、診療上絶対欠かすことのできないものは別として「want」と「need」をはっきりと峻別して設備投資を決めていくことがポイントとなります。「want」ばかりの設備投資では過大投資となり経営は成り立ちません。コスト・パフォーマンスが高いとか、診療圏内の患者特性や患者満足度を高めるためとか、差別化により患者数が増え採算が合うといった採算性の有無に重点を絞ることが大切です。

採算が合うしっかりした「need」があることを確認してから導入の可否を決めなければなりません。

自己資金は20%以上を目指す

開業資金の調達先として,自己資金、両親・親戚、金融機関、リース会社などがあげられます。自己資金を全部開業資金に投入し、返済負担のある金融機関などからの調達をできるだけ少なくすることが、一見余裕ある資金調達に見えます。しかし事業計画通りに順調に患者数が増えるとは限りません。開業後に起こりうるあらゆるリスクに備えるためにも自己資金のすべてを開業時に投入してしまうことは非常にリスキーとしか言えません。その意味で、開業を思い立ったならできるだけ自己資金を貯め、できるだけ多くのお金を金融機関やリース会社などから調達することが上手な資金調達方法と言えます。

融資銀行は自己資金がいくらあるかによって、開業に対する準備が周到にいっているかを判断する重要なバロメーターにしています。今後更に医療機関の競争が激しくなっていくと思われるので、新規開業投資の 20 %くらいは自己資金で賄うようにしましょう。

購入かリースか

医療器械等を導入するとき、リースを利用するのか借入金により購入するのか選択することになります。リースを利用した場合の

メリット

  1. 多額の資金を調達する必要がないこと
  2. 経済耐用年数にあわせてリース期間を設定すると、常に最新鋭の機種を活用できること
  3. リース料が全額経費に処理できること

などがあげられます。

デメリット

  1. 税制上の特別償却が受けられないこと
  2. 中途解約ができないこと
  3. 返済期間が5年程度短いため開業当初収入が思ったほど伸びないとリース料の負担が重たくなる

金融機関からの借入れと比較してどちらが有利かはケース・バイ・ケースといえます。リース料の支払いや借入金の返済に関し、シミュレーションに基づく検討が必要です。一般的には直接収益をもたらす医療器械などはリースを利用して早めに資金を返済し、次の設備投資に備えるようにし、直接収益に結びつかない内装工事関係は借入金等によりじっくりと返済していくと良いでしょう。

できるだけ制度融資を利用すること

開業資金の調達は、できるだけ多くの公的な金融機関や自治体の制度融資を利用することが大切です。医療福祉機構はもとより、国民生活金融公庫、都道府県などの自治体の創業支援融資などできる限り調べてください。制度融資の金利は固定であるので、今日のように金利が低いときに借入れをすると大変有利なります。

ただし、制度融資は新規開業の場合、診療所が不足の地域でないと受け付けなかったり、借入金額に制限があったり、返済期間が短く 3 〜 5 年といった条件もありますので十分調べ利用するのが肝心です。一般的には、比較的融資の受けやすい国民生活金融公庫を利用し、できるだけ多くの資金を調達するようにします。提供できる担保があっても融資金額は担保物件価格の 60 %〜 80 パーセントまでだと思ってください。担保がなくても保証人がいれば、最高1500万円までの融資(期間7〜15年、基準金利1.45% 平成17年7月現在)が受けられます。

国民生活金融公庫や制度融資だけで資金調達が賄えない場合は、他の金融機関から融資を仰がねばなりません。数年前までは、担保があっても都市銀行は新規開業医には融資をほとんど行ってくれませんでした。しかし、最近では、不良債権処理もかなり進んできたこともあり、新規開業医に無担保でも融資を行う金融機関が現れてきました。金利面では制度融資より当然不利ではありますが、開業資金の調達が民間の金融機関からも可能になってきたことは喜ばしいことです。

希望融資金額を引出すための金融機関との交渉術

新規開業資金を無担保で金融機関から調達するには、それなりの準備と交渉術が必要となります。金融機関は経営者である先生の人格、医療経営に対する姿勢、診療圏調査の分析、事業計画等を評価し、事業の将来性が有望で返済能力に問題がないと確信を持ててはじめて融資をしてくれます。特に開業の動機(目的)や勤務実績、診療圏調査結果と開業場所の選定理由は、審査の大変重要なポイントになります。あらかじめしっかり明文化しておくことが大切です。事業計画書は、綿密な市場調査や的確なデータに基づいて作成されていること、設備投資や返済計画に無理がないかがチェックされます。資金繰り事業計画は、シミュレーションをもとに、充分余裕を持った計画であることを説明してください。先生の強い開業への熱意と差別化を意識した診療方針などから、「成功、間違いなし」と、審査部に確信を持たせる説明ができれば最高です。

設備投資計画と資金調達計画(単位:万円)

設備投資等

資金調達

内装設備

2,800

国民生活金融公庫

3,000

医療器械等

3,000

○○銀行

2,000

敷金

1,000

××リース

1,400

運転資金

1,200

自己資金

1,600

合計

8,000

合計

8,000

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